俺はバーナーを手にとると溶接を始めた、バチバチと火花をあげながらパーツが組み込まれてゆく。
スイッチを切ると同時に火花のダンスが終わり、煙が晴れると完成された小型のエンジンがあった。
「ふぅ、やっと出来た。」
完成の喜びに思わず独り言を漏らす。
「ナ〜ニガ『フゥ、ヤット出来タ。』ダ、大会ハ、明日ダゾ、判ッテイルノカ?」
相棒の作業ロボット、『ジャック』だ、色々と性能はいいんだが少し小言が多いのがたまに傷だ。
「うるせ〜な、文句を言うなよ。
だって仕方ないだろ?まさかあんなことが起こるなんてさ……」
そう言いながら俺は戦闘用ロボット、『セイバー』を見る、真新しい青と白に塗り分けられた装甲が眩しい、が、胸の装甲が無惨に焼けただれ、内部の機械の大半が駄目になっている。
そう、こいつは一度完成していたロボットなんだ、まさか試運転でエンジンがオーバーヒートするなんて思いもしなかった。
「えんじんガ、おーばーひーとスル確率ハ、30%近クアルト、言ッタダロウガ、ナゼ、私ノ計算ヲ、疑ウノダ?大体、れいハ昔カラ、『武器サエ良ケリャナントカトカナル』ナンテ考エデ、ろぼっとヲ作ルカラ、おーばーひーとスルンダ。」
「おいおい、今回はスピード重視で作ってんだぞ?」
「ソレデモ、えんじんガ焼キ切レルホドノ、加速ヲサセルナ。迷惑千万ダ。」
言い合いをしながらも作業は続く、完成したばかりのエンジンをジャックに渡す。
ジャックはそれをセイバーの胸に組み込む。
続いて俺はセイバーの武器を取り出す、普通の大きさの三倍はある真っ青な大剣だ。
一部にシートを貼り付けると白のスプレー缶をツールボックスから取り出し一気に色を塗る。
そしてシートを剥がすと、そこだけ前に塗った青色が残る、セイバーの色に合わせた青と白に色分けされた大剣の出来上がりだ。
これで後は肝心要のセイバーが動けば完成なんだが……
俺はバーナーを持ちセイバーの所へ向かう、遠目に見ると俺とあまり身長が変わらないが、近づくとそれが普通の人の三倍はある巨人だと判る。
足場を持ってきてセイバーの前に置きその上に乗る。
そして焼けただれ、穴の開いた装甲をつかみ力を込め一気に……!

 バキッ  カラ〜ン

……ちょっと嫌な音がしたけどそこら辺は無視しとこ……
とりあえず空いたスペースに新しい装甲をはめる、ぴったりだ。
 そして溶剤を当てるとバーナーのスイッチを入れた。
再び火花のダンスが始まり、俺はバーナーを装甲の輪郭に合わせて動かす。
 と、工房の前に一台のトラックが止まった。
「レイ〜、頼まれた物持ってきたよ〜。」
隣の工房のアリシアだ、セイバーが壊れたと聞いて手伝ってくれているんだ。
「悪りぃ、今手が離せないんだ、そこに置いといてくれ。」
装甲を見、バーナーを動かしながら答える。
本当なら振り返って返事をしたいが、今手を離すと新しい装甲が台無しになる。
後、四分の一って所だ。
「後少しなんだ、セイバーの完成。」
「まあな、俺にかかればこれくらい何でもないさ。」
かっこつけて言ってはみたが、実は二日徹夜でフラフラなんだ……
正直今にもベットに倒れ込んでさっさと眠りたい。
「ありしあサン、ドウセデスカラ、オ茶デモドウゾ。ソコノ、武器おたく、ニ煎レサセマスカラ。」
あの野郎、何て事を!こんな格好でアリシアとお茶なんかできるか!
ついでに俺は武器オタクなんかじゃねえ!
必死に叫びたかったが今下手に手を抜くと動かした拍子に装甲が剥がれかねない、後少しだ、そして、
「よし!出来た!」
うれしさに思わず声が大きくなる。
「出来たの?見せて。」
「オ〜、今度ハ、おーばーひーとシナイト、イイナ。」
俺は五〜六歩下がってセイバーを見る。
全体的にシャープで戦闘機を連想させる人型のボディー、青と白で統一されている。
青い羽根にはバーニアが埋め込まれている。
ゴーグル型のカメラは光が入るのを今か今かと待っているようだった。
「じゃあ、セイバー完成を祝ってお茶でもしましょうか。」
アリシアがジャックの言葉を真に受けていた。
「いや、俺こんな格好だぞ?」
俺の格好は少し黒く汚れた白の作業着だった、所々に塗料が付いている。
「いいじゃない、あたしがお茶入れてくるわ。」
「いやいや!俺がやるよ!」
俺の部屋はとても汚く、とてもじゃないが女の子(特にアリシア)を入れられる状態じゃない。
そして俺はお茶を入れに、家に続くドアを開けた。

 少し苦戦しながらもお茶を入れた俺はテーブルを用意し、そこに二人分のお茶とオイル缶を置いた。
そして俺とアリシアはお茶を飲み、ジャックは自分の体にオイルを差した。
「壊れちゃったときは間に合うかどうか心配だったんだよ?」
「いや〜、まさか飛ばしたと同時にオーバーヒートするとは思わなかったし、確かに焦ったな〜」
「ついでに、その時の熱でマシンガンも暴発しちゃうし。」
「でも、持ってきてくれたんだろ?新しいやつ。」
「うん、あれ。」
アリシアが指した先にはやはり普通の大きさの三倍はあるマシンガンが置いてあった、銃身には大きく『OFFICIAL』の文字が彫り込まれている。
「う〜ん、やっぱライフルよりマシンガンだよな〜弾数多いし。」
「そう?あたしは一発が強いライフルの方がいいけど。」
「れいハ、射撃ぷろぐらむヲ、組ムノガ、昔カラ苦手ダシナ。」
「そうそう、昔から弾数ばっかり気にしてたんだよね。」
そう痛いところをつかれるとちとツライ、
「あたしと戦ってもいつも当たらなくて……あっ!」 アリシアが突然大声を出した。
「どうした?」
「レイ、エントリーしてないんじゃない?」
そういわれてみればしてなかったような……
「しまった!やばいぞ、今何時?」
「三時半!後三〇分で締め切り!」
「のんきにお茶飲んでる場合じゃね〜!急ごう!」
「うん!」
俺はすぐさま部屋に飛び込み、適当に服を着ると、作業場へ飛び出した。

 「悪い!待たせた!……ってアリシアは?」
「モウ行ッタゾ。」
薄情な、アリシア……ってへこんでる場合か!
必要な書類を集め、セイバーの写真を撮ると市役所に向かって一気に走り出した。

 〜数十分後〜

 何とかローム市役所にたどり着いた、すぐさま中に走り『祭事』と書かれた窓口を探す。
そこにはアリシアがいた、俺を見つけて手を振っている。
 見捨てられたわけではないことにホッとため息をつきつつ、担当者を呼んだ。
「君、ぎりぎり間に合ったね〜、名前は?」
書類を机に置きながら言った。
「レイ・ランチャーです、『RRF』の参加を希望します。」
『RRF』、それは『ROAM・ROBOTS・FIGHT』の略で簡単に言えばロボットの格闘試合だ。
ここ機械の町ロームならではの祭りで、技師の登竜門とも言われている。
俺はこの大会優勝するのが夢なんだ。
「レイ・ランチャー、一七歳と……IDカードを出して。」
俺はIDカードを渡す。
カードはそのままカードリーダーを通り画面に俺の顔写真と詳細データが出る。
「はい、登録完了。」
IDカードを渡され、俺はほっと一息つく。
「じゃあレイ、今から特訓ね!」
「なんで?ちょっと休ませてよ〜。」
さすがに疲れた、いくらアリシアが誘ってくれてもさすがに……
「だ〜め、まだ最終調整も終わってないんでしょ?」
「はいはい、分かりました……」
どうやらしごかれるみたいだ……
俺達は家路に付いた。

 〜次の日〜

 青空に花火が上がった、集合の合図だ。
俺はセイバーと整備用の機材をトラックに積み込んだ。
「行って来るよ、父さん、母さん。」
俺は両親と小さい頃の俺の写真が写っている写真に話しかけ、少し考えて、やっぱりトラックに乗せた。
俺の両親はまだ俺が小さい頃に旅に出て、そのまま還らぬ人になったらしい。
俺はしんみりした空気を振り切り、朝の空気を思いっきり吸い込むと運転席に乗り、アクセルを踏み込んだ。

 会場にたどり着いた俺はIDカードを通し、選手専用通路に通された、そこには多くの選手が自分のトラックを停め、ロボットを降ろし、最後のメンテナンスをしていた。
俺も自分のエントリーナンバーの場所にトラックを停めるとセイバーとジャックを降ろし、メンテナンスを行いながら作戦を立てる。
 戦いは一回で決まる、全員が一斉にコロシアムで戦うのだ、前半はともかく乱闘、後半は残った強い奴同士の戦いになる。
俺は何度もこの大会には挑戦しているが、毎回俺は前半でやられていた。
でも今年こそ必ず、勝ってみせる。
 (まあいろいろと不安は残るが)
噂ではかつてのチャンピオンがけがで入院し、今年は優勝するチャンスだそうだ。
俺は気合いを入れるとセイバーを起動させた。
異常はない、大剣もマシンガンもシールドも正常だ。
 (当たり前だ、まだ武器は使ってないんだから)
俺はヘルメットを被りマスターズスーツを着る、ヘルメットの中ではセイバーの目線で見た俺がヘルメットを被りマスターズスーツを着て立っていた。
俺は右手を挙げると、それに答えるようにセイバーの右手が挙がった、問題ない。
この画像はセイバーの見ている画像で、電波通信で直結しているのだ。
そしてこのマスターズスーツの動きが直接セイバーの動きになる。
俺は暇になったので周りを見渡した、いろいろなロボットがいた。
鳥みたいな奴、騎士みたいな奴、竜みたいな奴、真っ黒な奴…… なんかあの黒い奴のマスターは何やらロボットの胸の装甲を開き忙しくやっている、トラブルでも起こったのか?ご愁傷様。
そんなことをしているとブザーが鳴った、俺はセイバーをオートモードに切り替え、コロシアムに向かわせ、俺自身もマスタールームへ向かった。
 マスタールームは、簡単に言ったら、マスターがロボットを動かすとき、殴ったり蹴ったり、そういった行動をロボットの視点でするので危なっかしいから作られた、マスター専用の個室だ。
 (これがないとマスターはただの奇人に見える)
俺はすぐさまセイバーをマニュアルモードに切り替え、指定位置に停止させた、近くにはアリシアのロボット『ラフレシア』もある。
俺は最終確認をする、確かに左手にはシールド、右手にはマシンガンがあり、予備の弾倉も左右の腰に吊ってある、背中には大剣もある。
「それではマスターのみなさん、通信ナンバーを五七三九に合わせてださい、いいですか?」
俺はナンバーを打ち込む、すると他のマスター達の声がきこえた。
「No.一〇、OK。」
「No.一七、OKです。」
「No.三、OKだ。」
俺も言った。
「No.一八、OKだ。」
「それでは!第八三回ROAM・ROBOTS・FIGHT、開始!」

 合図と同時にロボット達が攻撃を開始した。
ミサイルの噴煙があたりを包む、俺はシールドを構えながら壁づたいに動く。
途中、ミサイルが二、三発シールドに当たる、問題ない。
噴煙が収まるとそこにはすでに五〜六体のロボットのスクラップが転がっていた。
エントリー数は一八体だから、残り一三体か。
数を数えた後まだきょろきょろしているオオカミ型のロボットにマシンガンの弾をお見舞いする。
火花が飛び散り頭部から火が上がり倒れた、残り十一体。
さらにミサイルポットの塊のロボットにもお見舞いする。
火花が飛び散るがこちらは貫通しない、装甲が厚いみたいだ。
俺は新たなミサイルの群れが向かってくるのをさけるため右へ逃げる。
すると同時にミサイルの群れが数秒前にセイバーがいた場所に連続命中する。
さすがに追尾型ではないらしく、動き回ればなんとかなる代物だ。
と、俺の周りが急に暗くなった、俺はその意味をとり急旋回する。
やはり数秒前にセイバーがいた場所に土煙が巻き起こる、空中からの狙撃だ。
俺は羽根のバーニアを一気にふかし、鳥型ロボットの真上をとる。
相手が顔をこちらに向けると同時にその顔にマシンガンの弾をばら撒く。
そいつはまともに弾丸を食らい、頭部を蜂の巣にされ落ちてゆく、残り十体。
安心していると、背中をすさまじい力で叩かれた、ドラゴン型のロボットの尻尾だ、飛行システムには問題がない。
俺はそいつをねらってマシンガンを撃つが、全然当たらない、弾が切れた。
新しい弾倉を入れるまもなく騎士型のロボットの剣がセイバーに襲いかかる! とっさに剣をマシンガンで受け止めた、銃身の半分に剣がめり込む。
そのままマシンガンを捨て、背中の大剣を鞘から抜くと、大上段から一気に斬りかかる。
相手はマシンガンを捨てるとともにシールドで大剣を受け止める。
そのまま俺は大剣を引き胸の装甲をめがけて突き出す。
相手も剣で攻撃を受け流す。
こいつ……出来る!
とたんに嵐のような反撃が始まった、相手は連続突きで大剣を叩く、大剣の剣先がそれたと同時にシールドでタックル、俺のシールドが手元から飛びセイバーが引き倒され、剣が首筋まで伸びる、俺はとっさに左腕で剣を受け止めた。
腕のダメージに警告音が鳴る、とっさに受け流止めたので何とか頭部破壊=失格にはならずに済んだ。
俺は相手を突き飛ばす、相手の体が宙に舞い上がると同時に俺は一気に斬りかかった。
まずバーニアをふかし左肩から袈裟懸けに一閃、そのまま大剣に左手を添え逆手に持ち替え足から頭部まで斬り上げる、相手は素早く下がり、表面の装甲を傷つけただけだ。
よし、思うつぼだ。
俺はバーニアをさらにふかし相手に右肩からタックルするとその勢いを利用して一気に胴体をなぎ払った。
相手は何が起こったかも分からず無抵抗に半分に切り裂かれた。
きれいに決まった事が嬉しく思わず格好つけて必殺技名まで言ってしまった。
「『マッハレイブ』!特訓の成果だ!」
まあ、特訓の成果なのは確かなんだが言っててちょっと恥ずかしくなった。
残りは……六体か、今回の大会は減るのが早いな。
ん?六体?いくら何でも早すぎる、見ると一体が恐ろしい速さで他のロボットを破壊していた。
あの整備ルームでトラブルを起こしていたロボットだ、見ると、戦っていたのはアリシアのラフレシアだった! ラフレシアは花びら型の八枚のカッターを相手にぶつける、相手はびくともしない、そのまま拳をカッターに次々と当てる、カッターはひしゃげて使い物にならなくなった。
続いてラフレシアはライフルを至近距離で打ち込むが、装甲に跳ね返される。
そのまま相手のキャノンがゆっくりとラフレシアにねらいを定める。
「危ない!」
思わず叫んだが無駄だった、そのままラフレシアは上半身を吹き飛ばされ、スクラップになった。
くそっ、認めたくはないが後五体……ってあと三体?うそ?
動いているロボットは俺のセイバーと、真っ黒なロボットとペガサス型のロボットだった、あ、撃たれた。
見る見るうちにペガサス型のロボットが真っ黒の奴の肩にあるキャノンで撃ち抜かれた。
待てよ……俺、あんな奴と一人で戦うのか?無理だろ?
だが敵は容赦せず撃ってくる。
俺は素早くバーニアをふかし上空へ避難、そのまま相手の後ろへ回り込む。
そして近くに落ちていた腕からマシンガンをもぎ取り、弾丸を相手の背中に叩きつける。
大剣を鞘に戻すとスクラップの中にあったミサイルポットのミサイルを全弾撃つ、綺麗に決まった。
相手の動きは遅い!装甲の厚さがあだになったみたいだ。
相手が振り返るとともにミサイルポットそのものを相手に投げつけた。
よし、倒れた!相手は白い煙も内部で起こっている。
「か、勝ったのか?」
思わず独り言を呟いてしまう。
と、相手の目の色が文字通り緑色から赤に変わった、何が起こったんだ?
すると突然通信が入った。
「何て事しやがる!あれには水素電池が入ってるんだぞ!」
かなり狼狽している、水素電池?うそだろ?
水素電池とは水素を化合させ、膨大なエネルギーに切り替える発電ユニットの事だ、水爆並みのエネルギーが得られる立派な『軍事製品』だ。
ただしエネルギーが不安定で、下手に衝撃を加えると中の水爆並みのエネルギーが爆発する。
「何でそんな物がここに?っていうより何で祭りひとつにそんな危なっかしい奴使ったんだよ!」
俺は当然の疑問をぶつけた。
「うるせえ!本当は表彰式の時に爆発させる予定だったんだよ!この町を消し飛ばすには十分だからな!」
つまりこういう事だ。

 1、相手はテロリストもしくは他の国からの工作員でこの町、ロームを破壊しようと計画を立てた
   (この町は国一番の軍事施設もある)
 2、その作戦が目の前のロボットを爆発させることだった
 3、しかし俺が一気に攻撃を仕掛けたので暴走(もう止められない)=爆発=町壊滅

という訳だ、うん、わかりやすい。
って冷静に整理してる場合か俺!俺が原因なんだ、何とかしなきゃ……
冷凍する?いや、無理だ。
相手はキャノンの熱でかなりの温度になっている、焼け石に水を差すような物だ。
じゃあ解体?無理だ、絶対無理だ。
半ば爆発寸前の核弾頭を分解するような物だ、放射能で確実に死ぬ。
つーかこの町が滅ぶ。
機能を止める?無理だ、相手の話しぶりだと暴走は止められそうもない、事実、相手のロボットは目に付く物を破壊している。
じゃあ残された手段は……
このセイバーを使ってあの暴れ回る敵の頭部を破壊して機能を停止させ、その後内部の水素電池を取り出し、ゆっくり分解もしくは海中で爆破処理するしかない。
危なっ!てか俺の腕に掛かってんのかよこの町の運命!
ただ一介のマスターから一気にこの町のヒーローまたは役立たずのどちらかで歴史に名を刻まれるような存在に格上げ(もしくは格下げ)だ、重い、俺には重荷すぎる……
とはいえ、愚痴を言っても何の慰めにもならない、やらなきゃおしまいだ。
俺は一気にセイバーのバーニアをふかし、相手に向かわせた。
相手のキャノンの弾が容赦なく降り注ぐ、マシンガンもライフルも効かないとなると残された手段は近接攻撃で相手の頭部を切り裂く事だ。
俺は再びマッハレイブをかける、相手のキャノンの一つに斬りつける、そのまま逆手に持ち替え足から頭部まで斬り上げる、バーニアをふかし相手に右肩からタックルをし、一気に胴体をなぎ払った。
どれも相手の表面装甲を傷つけただけだ。
反対側のキャノンに左腕を吹き飛ばされた、俺はかまわず相手の首に狙いを定め大剣を振る。
相手は左腕で受け止める、そのまま慣性の法則に従い腕を切り裂く。
衝撃が走る、背中を見ると羽根を打ち抜かれていた。
落ちる前に相手にしがみつく、衝撃で右足が機能停止、使用不可能になった。
相手のキャノンに大剣を吹き飛ばされた。
さらにキャノンが頭部に狙いを定める。
俺は右手を高々と振り上げいつの間にか叫んでいた。
「俺には、まだやりたいことがあるんだよっ!」
拳が相手の頭部にめり込む!同時にキャノンが火を噴いた。

 〜数日後〜

「何てこった、まだ一体残ってたなんて。」
俺はトラックの中でぼやいていた、あの黒い機体を破壊したとき、一体だけスクラップの中に動けるロボットがいたらしい。
優勝はそいつに持って行かれてしまった。
俺の手元に残ったのは壊れたセイバーと、準優勝の盾だけだった。
「まあ良いじゃないの、準優勝だけでも。」
隣にはアリシアが座っていた。
(セイバーの修理は市が負担してくれたので、それを取りに行く帰りだ)
「ところでさ、何であの時言ってた、『やりたい事』って何なの?」
「それはアリシ……いや!何でもない!」
ヤバイ、一瞬本音が出そうになった。
慌てて畳み掛けるように言葉を接ぐ。
「いや、せっかくRRFに優勝しかけたんだし、それに一流の技術者になるって決めたんだしさ、それだよ、それ。」
「そう?さっきあたしの名前っぽいこと言ってなかった。」
「言ってない!言ってない!」
俺は苦笑いを浮かべつつハンドルを握りなおした。
この思いを伝えるのは来年になりそうだ。