ピピッピピピッピピピッ!
うるさいなぁ……後10分……

『ピピッピピピピッピピピッ!』
後十分って言ってるのに……

『ピピピッピピピッピピピッピピピッ!』

「うるせえっ!」

『ガランガランガラン!』


いてっ!何か飛んできたし、ってヤカンですか!?
隣のやつがまた投げたのだろうな、きっと。
とりあえず俺の2度眠を妨げようとするPIPTを止めておく。
PIPTのデジタル時計はは9:53と指していた。
あ〜、これは俗に言う……
「遅刻だーっ!」
慌ててパジャマを脱ぎ籠手とすね当てとPIPTをつける、やばっ!後6分じゃん!
俺は着替えつつ遅れた時の事を考えてみた。

〜例その1〜
「武上はどうした?」
「ん〜?そういやあいつ遅れてるみたいだな。」
「じゃあ先に行くか。」
「えっ?武上君待ってあげないの?」
「奴を待てば待つほど悪霊があの森に集まってきて危険だ、行くぞ。」
バスに乗る皆、発車後にたどり着く俺、しかし誰もいない。
……いやだ、虚し過ぎる。
もっと前向きに考えよう、そうだ、たとえば美那が降龍寺を止めるとか……

〜例その2〜
「武上はどうした?」
「ん〜?そういやあいつ遅れてるみたいだな。」
「じゃあ先に行くか。」
「待ってくださいよ、別に少しくらいならいいじゃないですか。」
「奴を待てば待つほど悪霊があの森に集まってきて危険だ、行くぞ。」
「おやぁ?降龍寺君はそんなにあの悪霊たちが怖いんですかぁ?」
「……そんなことない、あんなもの恐るるに足らん、俺にとってはゴミみたいなものだ。」
「じゃあ待ってても大丈夫ですよねぇ。」
「ま、まぁ、そうなるな。」
「それにきっと武上君も『イヤだ!降龍寺に置いてかれたくない!僕がこんなにも愛しているのに!』とか考えながら急いで向かってきていますよ、きっと。」
「……どういうことだ?」(少し怒り)
「知らなかったんですか?武上君、あなたのこと好きみたいですよ?」
「うそっ!武上君そんな趣味あったの!?」
「案外、昨日の夜に『明日は降龍寺と一緒にお出かけだ、ルンルン♪』なんて考えてて眠れなかったんじゃないんですか?」
「武上……そんな趣味があったなんて……幻滅したぜ……」
「そんな……そんな趣味があったなんて……」
「人として間違ってるねぇ……」
「武上……殺す!」
「わるーい!遅れたっ!」
何も知らずにやってくる俺、冷たい目を向ける皆。
「……どしたの?みんな?」
「武上……」
「なんだ?降龍寺?」
「死ねぇぇぇぇぇぇっ!」
「ギャァァァァァァァァァァァッ!!!」
神速の速さで抜き放たれる三鈷杵!必殺の霊力を込めたそれは俺の身体をかまぼこのごとくスパスパと……
……絶対にイヤだ、まだ死にたくない。
無論、俺にそんな趣味はないが美那ならマジで言いかねない、つーか前にそれで社会的に抹殺された奴がいる。
もっと別のパターンがあるはずだ、そう、四守と降龍寺が喧嘩するとか。

〜例その3〜
「武上はどうした?」
「ん〜?そういやあいつ遅れてるみたいだな。」
「じゃあ先に行くか。」
「おいおい、あいつを追いてくのか?」
「奴を待てば待つほど悪霊があの森に集まってきて危険だ、行くぞ。」
「おい待てよ、ちょっとくらい待ってやろうぜ。」
「……遅れてきた方が悪い、置いてかれても文句は言えんだろう。」
「てめーのそういう所が気にくわないんだよ。」
「ほう……気にくわないとどうするんだ?」
「こうするに決まってんだろっ!」
逃げ惑う人々、崩れ落ちる校舎。
俺が駆けつけた所には仲間たちの屍とそれを省みず戦う四守と降龍寺の姿……
「なぜだ!なぜこんなことをした!答えろ、四守!降龍寺!」
「「うるさいっ!」」
吹き飛ぶ俺の身体、ちぎれる肢体……
もっとイヤだ、つーか全員死亡確定!?
そうならないようにするにはやっぱり俺が遅れなきゃいいんだよな、うん。
(というよりこんな事がマジで起こりかねないウチのチームって一体……)
着替え終えると恐るべき未来を回避すべく、全力で走り始めた。

「わるーい、遅れたーっ!」
全力で皆の下へ向かう、よかった!まだ何も起こってない!
何とかギリギリ到着だ、きつっ……
「何も全力疾走しなくてもいいのに。」
「いや、なんか遅れたら何されるかわかったもんじゃないのが2人くらいいるから不安で……」
「確かに……」
俺と天野の目が非人道的行為を本気で働きかねない2人に向けられる。
「どうかしたか?」
「どうかしました?」
慌てて顔をそむける、ヤバイヤバイ。
「じゃあ行くぞ。」
降龍寺の掛け声の下、俺たちは森へ向かった。


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